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第1回やながわ宇宙ビジネス交流会

AIPN事務局

2025年5月2日

「宇宙ビジネスセミナー」を福岡県柳川市で開催

ネットワーキングも活発に。柳川市で初の宇宙ビジネス交流会開催。 

 地方創生の観点からも注目が高まる宇宙産業ですが、地方では「どこから参入すればよいのか分からない」と足踏みしている事業者が多いのが実情です。そこで今回、実際に宇宙ビジネスに挑戦している企業のリアルな声や、比較的取り組みやすい衛星データの利活用事例を紹介する「宇宙ビジネスセミナー」を福岡県柳川市で開催しました。

 福岡市や北九州市といった中核都市ではなく、地方都市である柳川市の事業者の皆さまにも関心を持っていただけるよう、講師には山口・熊本・長崎・大分など、地域で宇宙ビジネスに挑戦する方々をお招きしました。

 セミナー後にはネットワーキングを実施し、企業による展示ブースも設けられました。

当日は、会場参加者75名、オンライン参加者16名、合計91名が参加し、地域の熱量を感じられる会となりました


ネットワーキングの様子
ネットワーキングの様子



来賓の挨拶

 はじめに、柳川市副市長の江島宏和様より、松永市長の代理として登壇され、交流会の開催と関係者への謝意を述べられました。宇宙ビジネスがITやものづくり、エンタメなど幅広い分野に広がる成長産業であることに触れ、地域企業の挑戦の重要性とAIPNへの期待を語られました。

 続いて、柳川市議会議員の田中康徳様より、来賓や企業への感謝とともに、柳川の歴史や自然環境にふれ、この地が宇宙産業の集積に適しているとの展望が示されました。

久留米市議会議員の山﨑ケブン様からは、筑後地域での宇宙産業の広がりへの喜びと、宇宙が誰にとっても挑戦可能な領域であるというメッセージが届けられました。AIPNの活動によって新たな入り口が生まれたこと、また久留米でのシンポジウム(ISTS)再誘致への意欲も述べられました。

 崇城大学の下田孝幸教授からは、JAXAでの豊富な経験と、現在の学生指導の取り組みについて紹介があり、種子島ロケットコンテストへの参加にも触れられました。九州全体での宇宙開発の活性化に向け、AIPNとの連携に意欲が示されました。

 最後に、AIPN会長の原田大輔より、一般社団法人化の報告とともに、民間主導で宇宙産業を推進する意義が語られました。柳川を拠点に、農業や産業と宇宙を結び付け、有明海沿岸を先端技術の集積地として発展させたいという強い決意が表明されました。


波多英寛様(ASUK代表 株式会社空宙技研 代表取締役 熊本大学助教)

「テーマ:人工衛星利活用について ASUK設立について」

波多氏からは「人工衛星の利活用とASUK設立」について講演が行われました。通信・測位・地球観測といった人工衛星の種類と特徴が紹介され、特にマルチスペクトルやSARデータを活用した農業・海洋・インフラへの応用事例に触れられました。熊本大学との連携では赤潮検出や収穫予測、水道メーター管理など地域実装の事例も紹介され、衛星データの活用には地方との連携が不可欠であると強調されました。また、日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus」や、九州衛星利活用の会設立の背景にも触れ、地域発の宇宙ビジネス推進の可能性を訴えられました。



水上陽介様(オーシャンソリューションテクノロジー株式会社 代表取締役)

「テーマ:洋上での衛星データ利活用について」


水上氏は、水産業DXと衛星データ活用の取り組みについて講演。操業データの電子化と、準天頂衛星「みちびき」×AIによる自動記録の仕組みを構築し、漁業現場の負担軽減と資源管理の効率化を進めていることが紹介されました。さらに赤潮・貝毒予測や操業安全の可視化などを含む複数の地域実証や、東南アジア・太平洋諸国との国際展開にも取り組んでいるとし、小規模企業による宇宙分野参入の可能性を柳川から広げてほしいと力強く呼びかけられました。


高山久信様(ASUK副代表 株式会社minsora代表取締役CEO)

「テーマ:まだまだ発展途上の宇宙産業〜宇宙をどのように使うかが鍵〜」

高山氏は、半世紀にわたって宇宙分野に携わってきた経験をもとに、「宇宙産業は本当に“産業”と呼べるのか?」という問いから講演を開始。現在は宇宙の商用利用が広がりつつある一方で、依然として経済的に自立した産業とは言いがたい現状を冷静に分析されました。そのうえで、みちびき衛星による高精度測位の実用化、農業・保険・福祉・交通など多分野への応用可能性を紹介し、実例として大分県でのスマート農業や車いす支援の取り組みにも言及。柳川を含む九州全体での連携と人材育成の重要性を訴えました。


松山功様(株式会社ひびき精機 代表取締役)

「テーマ:宇宙産業への参入の実際と可能性」


山口県から参加した松山氏は、製造業の立場から宇宙産業への取り組みについて講演。創業50周年を迎えた同社は、航空宇宙や半導体、医療向けの精密金属加工を手がけ、若手中心の体制でDX化を推進。人工衛星やロケット用部品の供給に加え、インターステラテクノロジズや東京大学と連携し、姿勢制御装置や小型衛星部品などの開発実績を紹介しました。また、国内外の製造拠点をデータで連携する取り組みや、ローカル5G・VRなど先端技術を取り入れたスマート工場化の挑戦についても言及。さらに、山口県航空宇宙クラスターの代表として、県内企業との連携や海外展示会への出展、若手人材の育成支援を進めているとし、柳川からの製造業参入にも期待を寄せました。


閉会に寄せて

 本セミナーは、福岡県柳川市において、地元事業者の皆様が宇宙産業への参入可能性を実感できるように構成しました。講師には、山口・熊本・長崎・大分など各地で実際に宇宙ビジネスに挑戦している実践者の方々をお招きし、衛星データの利活用やハード製造といった、地方企業でも取り組みやすい具体的な事例を多数ご紹介いただきました。


 ただ、一定の反響は得られたものの、事前の期待値に比べると参加者数はやや伸び悩みました。特に、地域企業の方々にとって宇宙ビジネスはまだ「遠い話」と感じられていることや、「自分ごと化」するための導線設計が十分でなかったことが課題として浮き彫りになりました。


 講師の皆様からは非常に具体的で親しみやすい実例をお話しいただきましたが、それをどう地域の課題や事業と結びつけて届けるか、今後さらに工夫が必要だと感じています。特に、宇宙ビジネスの「入口」にいる企業や行政関係者に対して、より分かりやすく・魅力的に・身近に伝える手法の開発が不可欠です。


 次回以降は、よりテーマを絞ったり、対象層に応じた呼びかけ方法を工夫することで、興味を持ちづらい層に対しても「一歩踏み出す」きっかけを提供できる場づくりを目指していきたいと考えています。

 今後も、航空宇宙産業推進ネットワーク(AIPN)として、今回の出会いや対話を起点に、事業化や技術連携に向けた後押しを継続していく予定です。

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